現在のゼブラフィッシュ実験システム

現在のゼブラフィッシュ実験システム

向かって左側に光臨界融合周波数測定用システム、右側に、強化量と強化率に対する敏感度の測定システムをセットしました。

実験制御には、左側が1万円しないRaspberry pi、右側が一般的なWindowsのPCです。

Raspberry Pi (4チャンネルのリレーボード付き)

このRaspberry Piで、2台の点滅光波形発生用ファンクションジェネレータをUSBで制御し、紫外線を含む自然光の分光特性にに近いLED(65D)を点滅させ、4台の赤外線センサーからの反応を検知し、2台のFeederの制御が行われます。大変コストパフォーマンスが良いです。

3Dプリンター製最新型ゼブラフィッシュ用Feeder

成体のzebrafishの場合、1セッション最低60強化は可能です。強化子として使用する殻剥きブラインシュリンプ卵を1回あたりごく少量(約80 μg)排出することが可能です。

光臨界融合周波数(Critical Flicker Fusion Frequency (CFF))実験

光臨界融合周波数(Critical Flicker Fusion Frequency (CFF))は、点滅光の点滅周波数を上げていくと、ある周波数から点滅光に感じられなくなる最大の周波数のことです。輝度が高いとその周波数(CFF)は、高くなります。ヒトの場合は約60Hzで、ニワトリは100Hzを超えます。CFFは視覚における基本的指標であるにもかかわらず、ゼブラフィッシュでCFFを行動的に測定したものはありません。以前から白色LEDを用いて測定を試みていて、Go/NoGo(継時弁別)課題で一通りのデータは得ています(図参照)。

ただ、「白色」LEDの分光特性が、実は、昼光色とは異なり、紫外線領域の波長が欠落しています。他の動物で、紫外線領域の波長を追加すると、CFFの値が増大するという報告があります。また、水中では短波長の光は減衰が大きいのですが、ゼブラフィッシュのように浅い水域に住んでいる魚類には紫外線が届いていると思われます。今回は、昼光色に限りなく近い昼光色LED(D65)を使用して、さらに、Go/Go(同時弁別)課題で再実験することにしました。このLEDは、アメリカの企業が開発したもので、その企業から直輸入しました。

今回のシステムは、安価なPC(1万円以下)であるRaspberry Piに中国製の安価なファンクションジェネレータをUSBで接続してLEDの点滅周波数と輝度を制御するシステムにしています。安価なシステムで実施する場合は、大抵、その分、付加的な労力が必要になることが常です。中国製のファンクションジェネレータはWindows用のDriverは提供していますが、Raspberry piで採用しているLinux用のdriverは提供しておらず、独力で接続プログラムをプログラミングする必要がありました。これに、1ヶ月近くかかってしまいました。

強化量への敏感度測定実験

多くのヒトは、提示された選択肢の強化量や強化頻度、強化が与えられるまでの遅延時間の違いに基づいて、ある程度得られる強化量が多くなるように選択を柔軟に変化させることが出来ます。ただ、ギャンブル依存症の患者や前頭葉などに障害のある患者は、適切な選択判断が出来ないことが知られています。

ゼブラフィッシュは、衝動性のモデル動物としても使用可能ではないかと考えられていますが、上述の課題の開発が遅れています。今回は、遅延時間による制御は難しそうなので、強化率と強化量の組み合わせで行います。

この課題を行う前に、まずは、強化量の違いに敏感かどうかの検証が必要で、現在その検証を行っているところです。

これまで、一度試みて、うまくいっていませんでした。強化量を変えても選択の変化が小さく、敏感であるというデータが得られませんでした。最近、3Dプリンターで作成したフィーダーの精度が上がったので、再度検証することにしました。例えば、左右の選択肢で、強化量を1VS3にしたときに、右側への選択が有意に多くなるかどうかを現在検証しています。